カテゴリー: 人事管理

懲戒処分の社内公表と限界

懲戒処分の社内公表と限界

<懲戒処分の目的>

懲戒処分を行う目的は、主に次の3つです。

 

1.懲戒対象者への制裁

懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとする。

2.企業秩序の回復

会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにする。

3.再発防止と労働者の安心

社員一般に対してやって良いこと悪いことの具体的な基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持する。

 

1.の目的からすると、懲戒処分の対象事実や処分の内容を公表する必要はありません。

しかし、公表しなければ2.と3.の目的が果たされませんから、ある程度公表することは必要です。

 

東京地裁の判決で、「懲戒処分は、不都合な行為があった場合にこれを戒め、再発なきを期すものであることを考えると、そのような処分が行われたことを広く社内に知らしめ、注意を喚起することは、著しく不相当な方法によるのでない限り何ら不当なものとはいえないと解される」としています(東京地裁平成19年4月27日判決 X社事件)。

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出向命令の根拠と出向拒否の根拠

出向命令の根拠と出向拒否の根拠

<出向の意味>

「出向」とは、他の企業の指揮監督下で労務を提供する形態の雇用契約です。

元々在籍している企業を「出向元(しゅっこうもと)」、実際に勤務している企業を「出向先(しゅっこうさき)」と言います。

出向元から見て、他の企業に出向することを「出出向(でしゅっこう)」と言います。

反対に、他の企業から受け入れている出向を「入出向(いりしゅっこう)」と言います。

また、籍を元の企業に置いたまま他の企業に出向する「在籍出向」と、元の企業の籍を失って他の企業に出向する「転籍出向」とがあります。

「在籍出向」では、出向元・出向先の両方との間で雇用契約が成立しています。2つの契約には矛盾が生じうるので、これを調整するため、一般には出向元と出向先の間で出向契約という契約が交わされます。

「転籍出向」では、出向元との雇用契約が解消され、出向先との雇用契約のみになります。元の企業に戻る可能性は、その企業のルールや慣行によります。

厄介なことに、これらすべてが一口に「出向」と呼ばれます。

しかも「出向」と言った場合に、どの「出向」を指しているかは企業によって異なります。

 

ここでは、最も一般的な在籍出向に限定して述べます。

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社員紹介制度を合法的に運用するために

社員紹介制度を合法的に運用するために

<社員紹介制度>

社員紹介制度は、自社の従業員から知人を紹介してもらい、採用活動の対象とするものです。

推薦・紹介を英語でreferralと言いますので、リファラル採用とも呼ばれます。

紹介者に対しては、謝礼の進呈や報奨金の支払いが行われます。

企業にとっては、採用コストの削減や、応募条件を満たさない応募者への対応の回避などの点でメリットがあります。

 

<法的な規制>

社員紹介制度については、労働基準法にも制限規定があります。いわゆるピンハネを禁止する規定です。

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始末書に「いかなる処分もお受けします」は必要か

始末書に「いかなる処分もお受けします」は必要か

<始末書を提出させる意味>

始末書の目的は、事実の報告、発生の原因分析、謝罪、具体的な再発防止策の提示です。

この中に謝罪が含まれないものは、単なる報告書あるいは顛末書ですから、上司の判断で部下に提出を求めることができます。

しかし、謝罪が含まれるものは始末書ですから、懲戒処分として提出を求めることになります。これは上司の判断で行えるわけではなく、就業規則に譴責(けんせき)処分などの具体的な規定があって、懲戒処分の適正な手続きに従い、会社の代表者が提出を命じることになります。

上司だけの判断で部下に始末書の提出を求めることは、職場での優越的な関係を背景として業務上必要相当な範囲を超えたことを行わせることになり、パワハラに該当するのが一般です。

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出勤簿が要る役員と要らない役員

出勤簿が要る役員と要らない役員

<役員の立場>

役員と会社との関係については、会社法に次の規定があります。

 

【株式会社と役員等との関係】

第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

そして、「委任に関する規定」は民法にあります。

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非正規労働者にも賞与や退職金の支払いが必要になるのか

非正規労働者にも賞与や退職金の支払いが必要になるのか

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

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社外での犯罪と懲戒処分

社外での犯罪と懲戒処分

<懲戒処分の制限>

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第15条〕

会社が「常識」に従って懲戒処分を行ったものの、その具体的な懲戒規定が就業規則などに無い場合には、「労働者を懲戒することができる場合」ではないので、懲戒権の濫用となり、懲戒処分が無効となります。

この場合には、懲戒処分の対象とされた労働者から会社に対して、慰謝料その他の損害賠償を請求できることになります。

人手不足で採用難、転職は容易という現状であれば、その労働者は転職したうえで損害賠償を請求してくる可能性が高そうです。

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報連相の活性化

報連相の活性化

<報連相が無い理由>

社員ひとり一人が独断で動くよりも、組織的に動いた方が、生産性が向上しリスクが回避できるのは明らかです。

そして、組織的に動くためには、部下から上司への報告・連絡・相談が欠かせません。

ところが、報告・連絡・相談が不足する会社・部署は存在します。

部下から上司への報告・連絡・相談が無い理由としては、部下の能力不足、上司による拒絶、上司のパワハラなどが考えられます。

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休憩時間の適正化

休憩時間の適正化

<労働基準法の定める休憩時間の長さ>

「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」〔労働基準法第34条第1項〕

したがって、出社後すぐの休憩や、休憩してからすぐに退社というのはできません。

また、8時間勤務で全く残業がないのなら休憩時間は45分と定めても適法です。

 

<休憩時間の短縮>

若いフリーターの中には、休憩時間を削って働きたいという人もいます。

しかし、休憩には心身の疲労を回復して、業務効率の低下を防いだり、労災の発生を予防したりする意味もありますから、本人の希望で短縮することはできません。

また、労働基準法の解釈にあたっては、行政も裁判所も、基本的には休憩が長いほうが労働者にとって有利であると考えています。

ですから、労働者が承諾しても希望しても、労働者に不利なことは認めないという労働法全体の考え方からすれば、基準を下回る休憩時間では違法となってしまいます。

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有給・無給を変更する場合の解決法

有給・無給を変更する場合の解決法

<ノーワーク・ノーペイの原則>

勤務時間中に営業に出かけ、社有車の中で昼寝をしたとします。その時間の賃金が支給されなくても、常識に照らして仕方のないことだと思います。これは、ノーワーク・ノーペイの原則のあらわれです。

これは「働かなければ賃金は発生しない」という原則です。法令には規定がありません。労働契約の性質から当然に導かれるのです。

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立します。〔労働契約法第6条〕

つまり、働かなければ賃金が発生しないのは、契約の性質上当然なのです。

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