月: 2019年9月

高年齢求職者給付金も循環的離職者にご注意

高年齢求職者給付金も循環的離職者にご注意

<雇用保険の求職者給付>

雇用保険では、労働者が失業した場合に必要な給付が行われます。

その代表は、「失業手当」と呼ばれることが多い求職者給付です。

一般にはあまり知られていませんが、この求職者給付は、仕事を辞めた時(離職時)の年齢により2種類に区分されています。

 

<65歳未満の基本手当>

離職時の年齢が65歳未満の一般の加入者(一般被保険者)は、離職時に一定の条件を満たしていれば、ハローワークで手続きすることによって、求職者給付を受けることができます。これを基本手当といいます。

一定の条件というのは、離職日前2年間に雇用保険加入期間が12か月以上であることです(離職理由によっては1年間に6か月以上の例外あり)。

この場合、離職の理由、離職時の年齢、雇用保険の加入期間(算定基礎期間)によって、所定の給付日数(90日~360日)が決まり、1日につき何円という計算で、定期的に給付を受けます(原則として4週間ごと)。

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取引先からの個人的な謝礼と懲戒処分

取引先からの個人的な謝礼と懲戒処分

<就業規則の規定>

多くの企業では、取引先から個人的な謝礼を受け取ることを禁止し、これに違反した場合には懲戒処分の対象となりうることを、就業規則に定めています。

本来は会社に帰属するはずの利益を、特定の個人が受領するというのは、不正行為となる場合も少なくないので、これを防止しようというわけです。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【懲戒の事由】

第66条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

⑪ 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき。

 

実際に、ある社員が取引先から個人的な謝礼を受け取ってしまった場合に、「不当な金品」といえるのか判断に迷うことでしょう。

懲戒処分に踏み切ることが困難かもしれません。

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傷病手当金の支給制限が行われる場合

傷病手当金の支給制限が行われる場合

<制限の理由>

傷病手当金は、健康保険により支給されます。

健康保険では、故意の犯罪行為など、制度の趣旨に反する恐れがあるときは、社会保険の公共性の見地から、給付の全部または一部について制限が行われます。

また、給付を行うことが事実上困難な場合や、他の制度から同様の給付が行われた場合の調整により、給付が制限される場合もあります。

 

<健康保険に共通の理由>

次のような場合には、健康保険に共通の制限または調整が行われます。

 

・故意の犯罪行為または故意に事故を起こしたとき

・喧嘩や酩酊など著しい不行跡により事故を起こしたとき

・正当な理由がなく医師の指導に従わないか保険者の指示による診断を拒んだとき

・詐欺その他不正な行為で保険給付を受けたとき、または受けようとしたとき

・正当な理由がないのに保険者の文書の提出命令や質問に応じないとき

・感染症予防法等他の法律によって、国または地方公共団体が負担する療養の給付等があったとき

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育児休業中の就労請求権

育児休業中の就労請求権

<就労請求権>

就労請求権とは、労働者が使用者に対し、実際に就労させることを請求する権利をいいます。

かつては、就労請求権を肯定する裁判例が見られました。

木南車輌製造事件(大阪地決昭23年12月14日)では、使用者は「労働契約関係が正当な状態においてある限り、労働者が適法に労務の提供したとき、これを受領する権利のみでなく、受領する義務あるものであり、正当な理由なくして恣意に受領を拒絶し、反対給付である賃金支払をなすことによって責を免れるものではない」とされました。

高北農機事件(津地裁上野支部決定昭和47年11月10日)では、「労働契約は継続的契約関係ゆえ当事者は信義則に従い給付実現に協力すべきこと、労働者は労働によって賃金を得るのみならず、それにより自信を高め人格的な成長を達成でき、不就労が長く続けば技能低下、職歴上および昇給・昇格等の待遇上の不利益、職業上の資格喪失のような結果を受けるなど」の理由から就労請求権が肯定されています。

しかし、この判例の理論は、就労請求権が一般に認められる根拠にはならず、特殊な技能を持つなど一定の条件を満たした場合のみに妥当します。

その後、労働は労働契約上の義務であって権利ではないので、就労請求権は認められないと判断されるようになっています(日本自動車振興会事件 東京地判平9年2月4日など)。

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労働基準監督署からの行政指導

労働基準監督署からの行政指導

<行政指導>

行政指導の定義は、行政手続法第2条第6号に次のように規定されています。

 

【行政指導】

行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

 

役所が、特定の人や事業者などに対して、ある行為を行うように、または行わないように、具体的に求める行為(指導、勧告、助言など)が行政指導です。

特定の人や事業者の権利や義務に直接具体的な影響を及ぼすのは「処分」であって、行政指導ではありません。

役所の行為が、処分か行政指導かは、法令の規定を読んでも判別が困難なものもあります。

ただ、行政指導であれば、行政指導をする者は、行政指導をしようとする相手方に対して、その行政指導の「趣旨及び内容」(その行政指導はどのような目的でどのようなことを求めているのか)と「責任者」(その行政指導をすることは役所のどのレベルの判断によって行われているか)を明確に示さなければならないことになっています。〔行政手続法第35条第1項〕

判断に迷うことがあれば、その行為を行っている各役所に確認するのが確実です。

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借金の多い社員の懲戒や解雇

借金の多い社員の懲戒や解雇

<基本はプライベート>

多額の借金を抱えた社員が会社で働いていると、それだけで上司や同僚、人事部門の社員たちは大きな不安を感じます。

それでも、借金というのは、会社からの借り入れでない限り、基本的にはプライベートなことです。

たしかに、プライベートなことであっても、会社の利益を害し信用を傷つける行為であれば、懲戒処分の対象となることはあります。

しかし、借金が多いことが発覚したからといって、それだけで解雇を検討するというようなことはできないのです。

以下、順を追って検討してみます。

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「不当辞職」という概念

「不当辞職」という概念

<不当解雇>

解雇権の濫用となる場合には、会社側から労働者に解雇を通告しても、解雇が無効となり、その結果、労働契約は解消されず、賃金や賞与の支払い義務は継続しますし、労働者に精神的な損害を与えていれば、慰謝料請求の問題ともなります。

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

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報連相が足りない社員への対応

報連相が足りない社員への対応

<報連相が必要な理由>

本来、権利や義務の主体となるのは生身の人間です。

民法は、このことを次のように規定しています。

 

【権利能力】

第三条 私権の享有は、出生に始まる。

2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

 

しかし、個人の力で成し遂げられることには限りがありますから、民法は法人の設立を認めて、目的の範囲内で権利や義務の主体となることを規定しています。

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中途採用と新卒採用とでは異なる普通解雇の有効要件

中途採用と新卒採用とでは異なる普通解雇の有効要件

<解雇に関する規定>

労働契約法には、解雇について次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

中途採用と新卒採用とで、異なる規定が置かれているわけではなく、両者に共通の規定があるだけです。

 

また、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、能力不足を理由とする普通解雇について、次のように規定しています。

 

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

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年次有給休暇の取得を嫌う社員への対応

年次有給休暇の取得を嫌う社員への対応

<年次有給休暇の確実な取得>

使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については毎年時季を指定してでも与えなければなりません。

年次有給休暇は、労働者に与えられた権利ですから、本来的にはその権利を使うかどうかは、労働者の自由に任されています。

しかし、年次有給休暇の取得を促進しても、取得率が50%前後で伸び悩んだことから、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、企業に時季指定を義務付けることになったのです。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

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