現物支給が許される場合

現物支給が許される場合

<現物支給>

現物支給とは、物品やサービスなど金銭以外の経済的利益で、賃金が支給されることをいいます。

具体的には、賃金の一部を会社の商品や割引券に換算して支給するような場合を指します。

通勤手当の代わりに、定期券を支給するのも現物支給です。

食事や栄養ドリンクも、賃金の代わりに支給されるのであれば、現物支給になります。

<賃金支払の5原則>

賃金の支払いについては、労働基準法第24条に規定があり、この中に賃金支払の5原則が含まれています。

通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則、毎月1回以上払いの原則、一定期日払いの原則の5つです。

このうち通貨払いの原則は、日本のお金で支払うという原則です。

 

<現物支給が許される場合>

法令や厚生労働省令によって、現物支給が許されている場合があります。

しかし、たとえば本人が希望して、退職金を銀行振出し小切手で受け取るような例外的なものに限られています。

この他、労働組合のある会社では、労働組合と会社とが現物支給についての労働協約を交わせば、その労働協約の適用を受ける労働者に限って、労働協約の範囲内での現物支給が許されます。

労働者の過半数を代表する者と会社との間で交わされる労使協定は、名称は似ていますが労働協約ではありません。労働組合が無ければ、労働協約は交わせません。

 

<社会保険料に関する扱い>

社会保険料の基準となる報酬や賞与の全部または一部が、通貨以外のもので支払われる場合は、「現物給与」とされます。

この価額は、厚生労働大臣が定めることとされていて、食事、住宅、その他に分けて、都道府県ごとに表示されます。

毎年4月1日に、厚生労働省告示により現物給与の価額が改定され適用されるのが通例です。

現物給与で支給するものがある場合は、その現物を通貨に換算し、金銭と合算して標準報酬月額等の決定を行います。

ただし健保組合では、現物給与の価額について、規約により別段の定めをしている場合があります。

 

<プラスアルファなら>

ただ労働基準法は、「賃金の代わりに」物品やサービスなどで支払うことを禁止しているだけで、「賃金とは別に」物品やサービスなどの経済的利益を提供することは禁止していません。

たとえば、一定の時刻を超えて残業している社員に、賃金とは別に夜食と栄養ドリンクを支給するような場合には、労働基準法違反にはなりません。

また、就業規則などで定められた賞与とは別に、会社の商品やサービスを社員に与えて親しんでもらうなども、労働基準法違反になりません。

 

<所得税にも注意>

所得税法にも「現物給与」の規定があって、原則として給与所得の収入金額とされます。

しかし、現物給与には、職務の性質上欠くことのできないもので主として使用者側の業務遂行上の必要から支給されるもの、換金性に欠けるもの、その評価が困難なもの、受給者側に物品などの選択の余地がないものなど、金銭給与と異なる性質があるため、特定の現物給与については、課税上金銭給与とは異なった取扱いが定められています。

「賃金とは別に」現物支給を行う場合にも、税法上の扱いを確認する必要があります。

 

社会保険労務士 柳田 恵一