評判の悪い妊婦加算とその廃止について

評判の悪い妊婦加算とその廃止について

<妊婦加算のスタート>

平成30(2018)年4月1日から、妊婦が健康保険を使って医師の診察を受けた場合に、初診料と再診料(外来診療料)に対して、時間内・時間外・休日・深夜それぞれに、通常の加算だけでなく「妊婦加算」という割増点数の加算が付けられることになりました。

妊婦加算は、初診時75点、再診時38点が算定されます。

妊婦については、診察時や薬の処方時に特別な配慮が必要であり、これを踏まえた診療報酬とすることになったのです。以前から、少々厄介な6歳未満児の診察などについて、「乳幼児加算」が付いていました。これと同じ考えのようです。

一般に、産婦人科では正常妊娠の有無の診療や妊婦健康診査では自費診療が原則です。加算は保険診療に対するものですから、自費診療の場合には妊婦加算がありません。

<妊婦であることの確認>

妊婦加算は、医師が診察の上、妊婦であると判断した場合に算定できることになっています。必ずしも妊娠反応検査の実施や母子健康手帳の確認は必要ありません(平成30年3月30日厚生労働省事務連絡)。

当日の診察で妊娠が確認された場合には、妊婦加算が算定できることになっています。

しかし、診察時には妊婦であることが不明で、後日妊娠していることが判明した場合には、 さかのぼって妊婦加算を算定することはできません(平成30年3月30日厚生労働省事務連絡)。

 

<妊婦加算の対象>

妊婦加算は、産婦人科だけでなく、どの診療科でも算定できます。

カゼなど妊娠に直接関連しない傷病について診察を行った場合にも算定できます。

夜間・早朝等加算と併せて算定できますが、産科・産婦人科特例加算と併せて算定できません。

 

<医師の手続き>

妊婦加算の算定に当たって、特別な届出は不要です。

しかし、カルテにはその患者が妊婦であると判断した旨の記載が必要ですし、レセプトの摘要欄にはその患者が妊婦である旨の記載が必要です(平成30年3月30日厚生労働省事務連絡)。

この妊婦加算は、病院独自の制度ではなく、妊婦が健康保険を使って医師の診察を受けた場合に共通の制度です。

 

<制度の凍結>

この制度について、厚生労働省は平成30(2018)年12月19日、中央社会保険医療協議会(中医協)に凍結の方針を諮問し了承されました。

これにより、来年1月1日から制度の適用が凍結され、上乗せ分の医療機関への支払いも、妊婦からの徴収も停止されます。

今年4月に始まったばかりの妊婦加算ですが、批判の高まりにより、わずか9か月で制度が破綻したことになります。

世論が高まった原因として、制度導入にあたっての広報が不十分だったことが挙げられるでしょう。制度の趣旨はもちろんのこと、導入の理由について、妊婦の多くが知らずにいました。

妊婦が病院で受診し、「妊婦加算」という聞き覚えの無い項目が「診療明細書」に表示されているのを不審に思い、ネット投稿したところ盛り上がってしまったようです。

今後は、有識者会議が設置され、廃止に向けて制度の見直しが検討されることになっています。

 

社会保険労務士 柳田 恵一