安易には許可できない自転車通勤

安易には許可できない自転車通勤

<自転車通勤>

就業規則で自転車通勤を認めている会社は多いですし、自転車通勤に対して通勤手当を支給している会社もあります。さらに、就業規則に規定は無いものの、自転車通勤を黙認している会社もあります。

特に都市部では、満員電車を避け運動不足の解消にもなるので、自転車通勤は増加傾向にあるようです。

さらに大手企業では、エコロジーの観点から自転車通勤を奨励していることもあります。

<従業員がケガをした場合>

従業員が自転車通勤中にケガをした場合に、ほとんどのケースでは通勤災害として労災保険が適用されます。

この場合には、会社の人事部門の担当者や顧問の社会保険労務士などが手続きをすることになります。

単独事故ではなく相手がいる場合には、第三者行為災害となります。すると、通常の労災保険の手続きで作成する書類の他に、何種類か別の書類を作成する必要があります。ケガをした本人から話を聞きながら書く部分が多く、事故の発生状況を示す図も添付します。

相手が自動車やバイクであれば、警察に報告して「交通事故証明書」の交付も受けておかなければなりません。

慣れていないと、全部で5~8時間ほどかかるでしょう。

 

<従業員が加害者になった場合>

さらに大変なのは、従業員が加害者になってしまった場合です。

会社は事故の発生には関与していません。しかし、民法715条の使用者責任が認められた場合には、事故を起こした従業員が負う損害賠償債務を会社が負担しなければなりません。

民法715条は、使用者が従業員を使用して利益を上げている以上、その使用によって生じたリスクも負担しなければならないという報償責任や、従業員を雇えば一定のリスクが発生することを覚悟しておいて、必要な対策をとるべきだという危険責任等の趣旨に基づいています。

自転車通勤を認めている会社も黙認している会社も、こうした法的責任を問われることがありますから、従業員に対する安全教育の実施は不可欠です。

最近になって、何度も道路交通法が改正され、自転車利用のルールも厳しくなっていますので、ほんの一部を以下にご紹介します。

 

<自転車の検査等に関する法改正>(平成25(2013)年12月1日施行)

警察官は、ブレーキを備えていないため交通の危険を生じさせるおそれがあると認められる自転車が通行しているときは、停止させてブレーキを検査できるようになりました。

さらに、危険を防止するため必要な応急措置を命じ、または、その自転車を運転しないよう命ずることができることとされ、これらの命令に違反した者に対する罰則が整備されました。

検査拒否または応急措置命令に違反した場合は5万円以下の罰金が科されます。

 

<軽車両の路側帯通行に関する法改正>(平成25(2013)年12月1日施行)

自転車等の軽車両が通行できる路側帯は、道路の左側部分に設けられた路側帯に限ることとされました。

路側帯の右側通行をした場合は、通行区分違反として、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されます。

ここで路側帯というのは、道路の端に引かれた白線の外側の部分です。

 

<自転車の運転による交通の危険を防止するための講習に関する規定の整備>(平成27(2015)年6月1日施行)

一定の危険な違反行為(信号無視、一時不停止、酒酔い運転等)をして3年以内に2回以上摘発された自転車運転者(悪質自転車運転者)は、公安委員会の命令を受けてから3か月以内の指定された期間内に講習を受けなければなりません。

受講しないと、5万円以下の罰金が科されます。

 

【自転車による危険な違反行為】

① 信号無視

② 通行禁止違反

③ 歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)

④ 通行区分違反

⑤ 路側帯通行時の歩行者の通行妨害

⑥ 遮断踏切立入り

⑦ 交差点安全進行義務違反等

⑧ 交差点優先車妨害等

⑨ 環状交差点安全進行義務違反等

⑩ 指定場所一時不停止等

⑪ 歩道通行時の通行方法違反

⑫ 制動装置(ブレーキ)不良自転車運転

⑬ 酒酔い運転

⑭ 安全運転義務違反

 

社会保険労務士 柳田 恵一