就業規則変更の落とし穴

就業規則変更の落とし穴

<就業規則変更の手順>

就業規則変更の正しい手順は、

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

という順番になります。

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。ですから、上記の順番が正しいわけです。

<意見書の内容>

所轄の労働基準監督署長に就業規則の変更届を提出するには、上記5.の意見書を添付しなければなりません。これが無いと、受け付けてもらえません。

ところが、「この変更には納得できません。私たちにとって不利益な変更です」「この変更は、労働基準法違反です」などの意見が書かれていても、問題なく受け付けてもらえます。

提出したときに捺されるゴム印には、「受付」の文字があります。「承認」「確認」ではなくて「受付」です。

これは、内容の審査までは行わず、形式を満たしているので受け付けましたということです。

つまり、意見書に労働者の切実な訴えが書かれていたとしても、これは全く考慮されないのです。

 

<従業員に不利益な変更>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【就業規則による労働契約の内容の変更】

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更内容を従業員に知らせていて、不利益の程度や会社側の必要性など様々な事情を踏まえて合理的であれば、変更後の就業規則が有効だということです。

実際には、不利益を受けた従業員や退職者が会社に対して民事訴訟を提起し、裁判所が「不合理」と判断しなければ簡単には無効になりません。

 

<法令違反の変更>

法令で定める基準に達しない労働条件を定める就業規則は、その部分については無効となります。〔労働契約法13条〕

この規定があるので、法令違反の就業規則でも、労働基準監督署では受け付けてもらえます。たとえ法令違反の規定が含まれていたとしても、その部分は無効になって法令の内容通りに修正されるわけですから、受け付けることができるわけです。

こうして、実際に所轄労働基準監督署の立入調査(臨検監督)や訴訟などがなければ、就業規則の法令違反は指摘されないのが実情です。

 

<トラブル防止のために>

このように、会社に都合よく就業規則を変更することも、かなり自由にできてしまうことは事実です。

大企業であれば、コンプライアンスに配慮していますから、法令違反の変更が行われることは稀でしょう。

しかし、従業員に不利益な変更は、ともするとエスカレートしがちです。大企業では従業員の数も多く、すべての従業員に不利益が生じないか検証しきれない部分があるからです。

就業規則変更届に添付する意見書とは別に、定期的に従業員への聞き取り調査を行い、不利益を受けている従業員がいないか確認することも必要でしょう。

 

社会保険労務士 柳田 恵一