物流事業での通報制度が強化されます

物流事業での通報制度が強化されます

<中小企業庁の決定>

平成30(2018)年10月24日に中小企業庁で開かれた「第5回中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と人材確保に関するワーキンググループ」で、下請事業者の長時間労働是正に向けた通報制度の強化策が示されました。

中小企業庁の決定ではありますが、親事業者による下請法違反行為などが通報の対象ですから、直接影響を受けるのは大企業ということになります。

運用開始は平成30(2018)年11月からとされています。

 

<通報制度の強化>

これまでは、労働基準監督署や労働局の立入検査(臨検監督)で、公正取引委員会や経済産業省(中小企業庁・経済産業局等)に通報が行われるのは、次の3つの条件すべてを満たした場合でした。

【臨検監督による通報の条件】

①労働基準法第24条、第32条違反等労働基準関係法令違反が認められること

②その違反の背景に親事業者による下請法違反行為や特定荷主による物流特殊指定違反行為の存在が疑われること

③下請事業者・特定物流事業者が通報を希望した場合

 

今回の決定で、上記のうち③の条件が外されることになりました。

立場の弱い下請事業者などは、取引関係を気にして通報を希望しないケースが想定されるため、この条件が外されたのです。

通報を受けた公正取引委員会や経済産業省は、立入検査によって法違反が認められた場合、下請法や独占禁止法の下での指導を行います。

※ 建設業でも、国土交通大臣許可の親事業者に対しては、同様の対応が行われます。

 

<社会保険労務士への情報提供>

労働基準監督署で把握している短納期発注による長時間労働について特徴的な事例(下請法違反の疑いがあるもの)を追加収集し、取引関係の所管官庁の相談窓口とともに、全国社会保険労務士会連合会等に情報提供が行われる予定です。

社会保険労務士は公務員ではありませんから、与えられた情報を元に企業の調査や指導に入るということはありません。

顧問先の企業などに違反行為が無いことを確認し、違反があれば企業とともに改善していくことになります。

 

【参考:労働基準法24条】

(賃金の支払)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

2 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

具体的には、残業手当や年次有給休暇を取得した日の賃金の未払いなどがあります。

 

【参考:労働基準法32条】

(労働時間)

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

具体的には、三六協定書を所轄労働基準監督署長に届け出ないで、法定時間を超える残業をさせた場合です。

 

社会保険労務士 柳田 恵一