月: 2018年11月

高度プロフェッショナル制度の対象業務(厚労省の素案)

高度プロフェッショナル制度の対象業務(厚労省の素案)

平成30(2018)年10月31日、厚生労働省が労働政策審議会の労働条件分科会に、働き方改革関連法で来年4月から導入される高度プロフェッショナル制度(高プロ)について、具体的な対象業務の素案と導入する場合の企業の実務フローを示しました。

今後、この資料に沿って議論が進むことになります。

 

<対象となる業務の条件>

対象業務とされるには、次の条件を満たすことが必要です。

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働かせ方改革になっていませんか

働かせ方改革になっていませんか

<働き方改革の定義>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ労働生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

ここで、労働生産性を向上させるために人件費を削減、あるいは従業員の手取り額を減らすことは、明らかに働き手の欲求に反しますから、働き方改革にはなりません。

 

<企業にとっての働き方改革の目的>

政府としては、少子高齢化による労働力不足や消費の落ち込みを解消するために、何としても働き方改革を推進しなければなりません。

しかし、企業が働き方改革に取り組むのは、政府に協力することが目的ではありません。

求職者に「この会社で働きたい」と思わせること、従業員に「この会社で働き続けたい。貢献したい。自分が成長したい」と思わせること、従業員の家族をはじめ取引先や金融機関、そして何よりお客様に「この会社は良い会社だ」と思わせることが、本音の目的だと考えられます。

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大企業にもいる「名ばかり管理監督者」

大企業にもいる「名ばかり管理監督者」

<不幸な「名ばかり管理監督者」>

残業手当、休日出勤手当といった時間外割増賃金を支給されない「役職者」「管理職」が多数います。その根拠とされたのが次の条文です。

 

【労働基準法41条】

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

この「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するのはどのような人なのか、労働基準法の中には説明がありません。

会社の中でイメージされやすいのは、何となく「役職者」「管理職」でしょうか。

このように解釈すれば、新入社員であれ誰であれ、役職さえ付けて管理職扱いにすれば、残業手当などを支給しなくても構わないことになりますから、会社にとっては都合の良い解釈です。

小さな企業では、正社員の全員にリーダー、チーフ、班長など、手頃な役職名を付けて、割増賃金を支給しないということも行われていました。

最近でも、「管理職」には残業手当を支給しないこととしている大企業や大手グループ企業について、その違法性を指摘するニュースが流れています。

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使用者の都合で半日休みになったときの減給

使用者の都合で半日休みになったときの減給

<ノーワーク・ノーペイの原則>

「ノーワーク・ノーペイ」とは、「労働者の労務提供がなければ使用者は賃金を支払わなくてよい」という原則のことです。

これを直接規定した法令はありませんが、労働契約法には次の規定があります。

 

【労働契約の成立】

第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

つまり労働契約は、労働者の労働に対して使用者が賃金を支払う約束だということです。

裏を返せば、労働者が労働しなければ使用者に賃金支払い義務は無いのが原則です。

ただし、使用者側に何か落ち度があれば、賃金の全額または一部の支払義務が生ずることはあります。

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企業に求められる安全配慮義務の根拠

企業に求められる安全配慮義務の根拠

<労働契約法の規定>

労働契約法には、安全配慮義務について次の規定があります。

 

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

労働契約法は、最高裁判所の判決の理由中に示された判断を中心にまとめられた法律です。

ですから、この法律ができる前から、安全配慮義務は認められていたことになります。

 

<最高裁の判決>

上の規定の元となったのは、昭和50(1975)年2月25日の最高裁第三小法廷の判決です。

陸上自衛隊の隊員が、自衛隊内の車両整備工場で車両を整備していたところ、後退してきたトラックにひかれて死亡し、遺族が国に対して損害賠償を請求した事件です。

この判決は、「国は、国家公務員に対し、その公務遂行のための場所、施設、器具等の設置管理またはその遂行する公務の管理にあたって、国家公務員の生命および健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解すべきである」と述べています。

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メールで労働条件を通知できるようになります

メールで労働条件を通知できるようになります

<労働契約の成立条件>

労働契約は、使用者と労働者との口頭による合意で成立しますので、労働条件通知書を交付しなくても、労働契約そのものの効力には影響しません。〔民法623条〕

 

<書面による通知義務のある法定事項>

しかし、労働契約の成否とは別に、労働者を保護するため、労働条件のうち次の法定事項については、使用者から労働者に書面で通知する必要があります。〔労働基準法15条1項〕

これを怠ると、1人につき30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法120条〕

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働き方改革のチェックポイント

働き方改革のチェックポイント

<働き方改革とは>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ労働生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

 

<長時間労働の解消>

現在、大手企業を中心に最も進められている働き方改革といえば、残業時間を初めとする労働時間の削減です。

労働時間の削減は、ひとつ一つの業務の必要性を見直すことが基本です。過去からの習慣で行っている業務、得られる成果が経営陣の自己満足だけのような業務は最初に切り捨てられます。

これはこれで正しいのですが、労働者側からは「働き方改革の影響で収入が減った。転職を考えている」という声もあがっています。

残業時間の減った正社員は、その分だけ残業手当が減り給与が減少します。パート社員は時間給ですから、出勤日数や労働時間が減った分だけ収入が減ります。

会社側は、働き方改革で労働時間が減り、労働生産性が向上したということで喜んでいる一方、働き手の不満は膨らんでいるようです。

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雇用情勢の概況と企業の対応

雇用情勢の概況と企業の対応

平成30(2018)年9月28日、厚生労働省が閣議で「平成30年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)を報告し公表しました。

この中で、雇用情勢の概況が次のように分析されています。

 

【雇用情勢の概況】

1. 2017年度の完全失業率は2.7%と1993年度以来24年ぶりの低水準となったことに加えて、有効求人倍率は1.54倍と1973年度以来44年ぶりの高水準となっており、雇用情勢は着実に改善している。

 

2. 雇用者数(15~54歳)の推移をみると、正規の職員・従業員は3年連続で増加しており、2017年では2,841万人(前年差36万人増)となった。

 

3. 他方、雇用人員判断D.I.により人手不足の状況をみると、人手不足感が高まっており、2018年3月調査では、全産業・製造業・非製造業のいずれもバブル期に次ぐ人手不足感となっている。

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社内で本人がいない時に悪口を言うのはパワハラか

社内で本人がいない時に悪口を言うのはパワハラか

<パワハラの定義からすると>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など「職場内での優位性」を背景に、「業務の適正な範囲」を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または、職場環境を悪化させる行為をいいます。

これが厚生労働省による説明です。

パワハラを行う者が、直接被害者に働きかけることは条件に含まれていません。

また、厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)では、次のように規定されています。

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深夜業従事者の健康診断

深夜業従事者の健康診断

<健康診断の対象者>

企業は、常時使用する労働者に対し、労働安全衛生法に定める基準により、健康診断を実施しなければなりません。

たとえ就業規則に規定が無くても、この実施義務を免れることはできません。むしろ、健康診断に関する規定がもれていれば、就業規則への補充が必要です。

労働安全衛生法に定める対象者の基準は次の2つです。両方の基準を満たす人については、健康診断の実施義務があります。

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